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“オンライン保健室”の立ち上げで企業の体制構築と従業員をサポートする――産業看護師メンバーの奮闘

エンプロイーサクセスチームは、2021年から「専門職サポート」というサービスをスタートしました。「専門職サポート」は、企業の人事・労務担当者を対象に産業保健体制構築をサポートするものです。

今回は「専門職サポート」で活躍しているきくち陽子のこれまでのキャリアや産業看護師として心がけていることなどを、彼女が全面的に携わってきた「健康相談窓口開設」のプロジェクト事例を通して紐解きます。

きくち 陽子(Yoko Kikuchi)
サービスコンサルテーション部 エンプロイーサクセスチーム 

==経歴==
サービス業にて勤務したのち、専門性の高い医療分野に興味を持ち看護師免許取得。

都内の総合病院に入職後、消化器内科病棟にて病棟看護師として勤務。
地域医療に興味を持ち皮膚科クリニックで医師の診療・手術補助と患者対応を務める。

患者対応を行う中で、働く人の健康・産業保健に興味を持ちiCAREに入職。
現在はチームのサブリーダーとしてクライアント対応とマネジメント業務に従事。

「医者や病院がいらない世界へ」という想いに惹かれ、iCAREへ

きくちは、美容業界で数年勤務後、看護師免許を取得しキャリアチェンジしました。

きくち:それまで医療とは別の業界で仕事をしていましたが、先々を考えると、専門性を身に付けておいた方がいいと考え、親族の勧めで看護の道に進むことにしました。今も昔も、「人に寄り添える仕事」というのが選択の軸となっています。

専門学校を卒業後、消化器内科病棟に勤務。その後、地域に根ざした医療に関心を持ち、地域のクリニックに転職。その中で、病気になる前段階でできることはないかと「予防医療」に興味を持ちます。

そんな中で見つけたのがiCAREでした。ですが、きくちにとってスタートアップ企業は未知の世界。それまでは決められたことをコツコツとこなす働き方をしてきたため、iCAREに飛び込むことに心配もあったと言います。彼女はなぜこの会社で働こうと思ったのでしょうか。

きくち:まず、失敗を恐れず挑戦する姿勢がいいなと思いました。また、オフィスを見学したときに、スタッフ同士の距離も近く風通しが良い社風が見えたことも1つの理由です。そして何より、面接のときに、代表の山田が「医者や病院がいらない世界をつくりたい」と話していたことが印象的だったんです。その想いに触れたことが入社の決め手になりました。

きくちの所属するサービスコンサルテーション部門は、コミュニティクリエイションチーム(通称:CC)とエンプロイーサクセスチーム(通称:ES)の2チームで構成。きくちは入社以降、ESチームの一員として、テキストカウンセリングによる従業員サポートに従事してきました。

カウンセリングにおいては看護師の経験が活かされるものの、看護師と産業保健の違いに悩んだこともあったと言います。

きくち:看護師は、目の前の病気や不調を治すことが第一なのですが、産業保健においては、就業と健康とのバランスを考えなければいけないところが難しいと感じました。

たとえば、健康診断で血圧を測定し、上が180超、下が130超という数値は、一般的に言えば就業制限をかけて安静にしなければいけない状態です。でも実際にはその方にも生活があって、担っているお仕事がある。そう考えたときに、一概に「休んでください」とは言えないですし、「その時たまたまそうだっただけです」と言って納得していただけないケースもあります。

私たちはそのような中でも健康に働いていただくためには何ができるか、どうしたら行動を変えていただけるのかなど、コミュニケーションの中で模索しています。

2021年7月からは、BtoB向けの新サービスとなる「専門職サポート」がスタートしました。企業内の産業保健体制の構築を行うサービスで、サポート対象は人事・労務担当者。社内で起きる産業保健関係の問題についてヒアリングし、課題の明確化や優先順位づけ、施策の提案など、コンサルティングの形で携わるものとなります。
 
きくちはこの専門職サポートを行いながら、従業員サポートとしても企業に入り込み、カウンセリングや保健指導を行っています。

オンライン保健室を開設したことで、潜在ニーズが可視化された

きくちが専門職サポートとして伴走する企業の中で、「従業員のメンタルヘルスやフィジカル面のサポートに注力したい」という要望を受け、企業内健康相談窓口を立ち上げるプロジェクトが始まりました。
その概要と具体的な施策を、立ち上げから実際の従業員相談まで一連の流れ全てに対応したきくちの視点から紹介します。

きくち:その企業は普段フルリモートに近い勤務体系を取っており従業員様の様子が見えにくくなっている現状がありました。「早期に不調を発見・解消できる医療の専門家への相談の場を」というご要望から、オンラインではありますが、テキストではなく対面のコミュニケーションを行う相談窓口としました。イメージとしては「オンラインの保健室」です。

立ち上げにあたり運用が滞ったり、形骸化したりすることは防ぎたかったので、まずは目的のすり合わせを入念に行いました。その上で、月の相談数を予測し、窓口を開く時間と曜日、報告経路や緊急時の対応について決めていった形です。実際にご予約いただいた従業員様の相談対応も私が実施しています。

社内への周知活動も、人事の方にご協力いただき、資料を作成して全社定例などで発信していただきました。また、産業保健や健康情報に関することを月に1回、私が『保健だより』のような形でメルマガを作り、発信しています。

このような取り組みの結果、想定していた以上の活用につながりました。月に3〜4名ほどの利用を予測していたところ、現在は月に7枠ほどのリクエストをいただいています。

元々あった潜在的なニーズに加え、「口コミが広がっていること」もありそうだと人事の方からフィードバックをいただいています。窓口で相談を受けた従業員にアンケートを取ると、おおむね満足度は高く「またカウンセリングを受けたい」という感想をいただいており、それが社内で口コミとなっていると考えられます。

立ち上げから周知、運用開始まで数ヶ月や半年、1年かかる企業様が多い中、今回は上手く連携が図れ、2ヶ月ほどで開設できました。人事担当者の方のご協力があってこそ成り立ったことですが、人事の方々はそれ以外の業務がかなり多いので、少ない時間で円滑に進められるように、できるだけこまめに簡潔なコミュニケーションを取ることを心がけています。

窓口に寄せられる相談内容は、「睡眠に関すること」や「仕事のモチベーション・メンタルヘルスに関すること」をはじめ、中には「キャリアの築き方」についての相談もあるようです。体調不良からキャリアまで、何でも気軽に話せるというのは、さながら“保健室の先生”。看護師の経験も生かしながら、きくちは奮闘しています。

職種の層の厚さと業種業界の幅の広さがESチームの強み

今回のプロジェクトでは、人事担当者の健康意識や課題意識が高く、多くの協力も得られたため、円滑な立ち上げと運用を実現しました。ただ、企業規模やフェーズによって、意識やできることには差があります。多様なタイプの企業に合わせ、きくちはコミュニケーションの取り方を工夫しています。

きくち:スタートアップやベンチャー企業で、1人人事をされていたり、バックオフィス経験がなかったりすると、『そもそも何をしたらいいのかわからない』という方もいらっしゃいます。そういったときには、まずヒアリングをして現状把握をします。

必要書類の準備、体制の構築について確認をさせていただいた上で、こちらからご提案させていただくことが多いですね。企業として従業員の健康をどうしていきたいかを考えていただけているのであれば、それに適した体制構築を提案していきます。

産業保健の領域は、定量的な評価が難しい仕事です。それでも、前述の健康相談窓口のように、予測以上の相談数を実現したことや、円滑にプロジェクトを推進できていることに対して、やりがいを感じるときくちは言います。

ESチームの強みは、看護師や保健師、助産師、臨床心理士など、多様な資格を持ったメンバーが集まっていること。さらに、1人ひとりが常に複数の企業をサポートしているため、様々な業界における働き方や産業保健の知見が蓄積されていくのも特徴です。

きくち:いろいろな業界の情報が集まっているので、困ったときにはいつでも相談して、方向性の確認をしたり、提案の内容を一緒に考えたりすることができて心強いですね。難しい仕事ではありますが、こうして相談できる環境があるからこそしっかり対応できている感覚があります。

1つの企業で働き続ける保健師さんもいらっしゃるのですが、私たちは常に何社かを受け持ち、いろいろな業種業態の企業をサポートしています。社風や従業員様の特性はそれぞれ違うので、毎回新しい発見があり、面白いです。自分としても引き出しがかなり増えていると思います。

多職種の経験×多業界の事例を共有し合うことで専門職サポートとしての提案の幅はかなり広くなります。この層の厚さがESチームの魅力であり強みです。

不調の早期発見、早期復調につながる取り組みを続ける


iCAREに入社して約3年。入社後の会社について「いい意味で裏切られた」とも語るきくち。

きくち:看護師の世界は常に緊張感もあり、時には厳しく指導いただく場面もあったので、中には厳しい方もいらっしゃるのではないかと内心ドキドキしていたんです。でも、実際にはそんなこと全然なく、逆に「こんなに親身になっていただけるのか」と驚きました。

日ごろから従業員様に対するカウンセリングをされている方々なので、話を聞いて気持ちを汲み取る力が高いですし、安心してお話ができます。職場環境は入社前に思っていたよりも、さらによかったですね。

産業保健体制の構築は1か月や2ヶ月でできるものではなく、半年〜1年以上の長期で取り組んでいくものです。すぐには成果が見えにくい中でも、企業の担当者とじっくり伴走しながら問題解決していくのがESメンバーの役割。

きくち:産業保健の取り組みは工数がかかることが多いですが、多様な悩みを抱える企業様に対して、産業保健に取り組むことの大切さ、面白さ、会社への貢献度などをお伝えし、「積極的に取り組もう」「やってよかった」と思っていただけるようなサポートを続けていきたいと思います。
 
コロナ禍で、企業内の不調者は増加傾向にあり、2〜3年経つ今だからこそ顕在化してきた課題もあります。そのような傾向を実感し、対応の現実味が帯びてきて、着手する必要を感じられている企業・人事担当者も増えてきています。

このような現状に対応すべく、きくちは「兆しを見つけ、不調になる前段階での介入や早期の復調につながるような取り組みを進めていきたい」と意気込んでいます。

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