始まりの音
※この記事は2019年8月28日に投稿されたものです
聞き慣れた電子音が空気を震わせる。
この音を止めたら、カーテンを開けたら、新しい毎日が始まる。
そんな予感がして、スマホに手を伸ばす。
私はりん。
雨音が蝉時雨に変わる頃、株式会社iCAREに入社した。
カスタマーサクセスという聞き慣れない言葉を知ったのは1年前。
セミナーで知った言葉を帰りのエレベーターの中で反芻しながら、1年後の自分がカスタマーサクセスに関わることになるとは、予想すらしていなかった。
私はずっとHRの世界で生きてきて、営業とサービス運営しか経験がなかった。
着信を告げる電子音が職場に響き渡る。
誰よりも早くその電子音を拾うのが私のささやかな自慢だった。
HRの世界は繊細で、私の想像のしない深さがそこにはあった。
ただ、その繊細さと深さに、私の同僚は耐えられなかったのだと思う。
おはようと声をかける。
その相手がいなくなって初めて、健康で働くことが当たり前でないことを知った。
それは、夏を告げる雨が窓を叩き始める少し前だった。
人は失ってから健康であることが幸せだと気づく。
できることならば失わずに幸せであり続けて欲しい。
そう思える人がいるのならば、iCAREの扉を叩いてほしい。
内定を告げる電子音を止めたら、新しい毎日が始まる。
そんな予感がして、スマホに手を伸ばす。
私はまだ、カスタマーサクセスが何もわからない。
それでもできることを一つずつ。