広島カープの伝統に学ぶ、クラウドファンディングの正攻法
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広島カープの伝統に学ぶ、クラウドファンディングの正攻法

※この記事は2021年1月25日に投稿されたものです

おはようございます、
マーケティングマネージャーのたけCです。

流行りにちょっと遅れてしまいましたが、『天穂(てんすい)のサクナヒメ』はじめました。Switchで米作り6年目に突入しました。

えっ知らない?じゃぁこの動画を見てみてください。きっとあなたも米作りしたくなるから。


【ゲームさんぽ/天穂のサクナヒメ】ごはんソムリエ・森崎博之さんと一緒にお米づくり

2020年、密かに大きく流行したこと

2020年はコロナ禍にあって、マーケターにとっても予測がつかないブーム・流行が巻き起こった年でもありました。

感染症の対策として、古のあやかし(アマビエ)がフューチャーされたら、人々が蘇(奈良時代の乳製品)を作り出すし。

100日後に死んだワニが炎上したところで、
ワニ先生(吾峠呼世晴)が描く鬼退治物語が歴史的大ヒット。

ステイホームが叫ばれるから、ゲームの中だけでも密になりたいと『あつまれどうぶつの森』に群がっていたと思ったら、まさかの稲作ゲームが台頭してきました。

マーケターとしては一時的にせよ流行したものはウォッチしたほうがいいですね。

で、
ビジネス面で2020年流行した手法のひとつがクラウドファンディング

そこで今日は、クラウドファンディングをいかに成功させるかについて、プロ野球チーム「広島東洋カープ」を実例に解説していきましょう。


クラウドファンディングは、原始的な金融施策

2018年ごろから市場が活発になってきたクラウドファンディング。ただ実際に世の中に受け入れられはじめたのは2020年にはいってからのようですね。

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「クラウドファンディング」の検索数の推移

クラウドファンディングとは、資金調達手法のうちのひとつ。最近流行りの・・・と言っていますが、実態は原始的な金融施策そのものなんですよね。

つまり、多数の人が少額のお金を工面することで、まとまったお金が今すぐに必要な人(事業)の資金にあてる構図。

一方で、クラウドファンディング以外の投資家や銀行からの資金調達手法は、少数の人(団体)が多額のお金を工面する形。

これまでは、こうした人と人とのマッチングや資金の流れの管理が複雑だったのですが、インターネットが個人のポケット(=スマホ)に普及することでクラウドファンディングがカンタンになってきた。

という背景があります。

プロ野球初!カープのクラウドファンディング

ここでカープの例を見てみましょう。

現在から遡ること70年前、創設2年目のカープは早々に資金難に陥っていました。

プロ野球チームのもっとも大きな収入源は「観客の入場料」です。現在のプロ野球では、ホーム球場の入場料がそのまま球団に入ります。(カープであればマツダスタジアム)

しかし、当時のプロ野球はホーム・ビジター関係なく、勝ったチームに7割・負けたチームに3割の入場料が入る仕組みでした。そう、勝つ球団は富み、負ける球団は貧するルールだったのです。

年間の勝率が3割以下だったカープはまともに入場料を得ることができず、選手への給料未払いが発生。試合の遠征費も工面できないので、夜行列車の座席代が払えないので通路に新聞紙を敷いて座った・・・という逸話も残っています。

そんな資金難の折に、カープが実施したのがかの有名な、たる募金

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「弱くて給料も払えないようなチームにプロ野球リーグに参加する資格はない」

当時のプロ野球連盟から解散または合併が言い渡されていた中で、たる募金がはじまったきっかけはカープファン自身からでした。

地元紙・中国新聞の野球部員が広島総合球場に樽を持参。試合を見に来た人から資金を集めはじめ、シーズン中鳴かず飛ばずの戦績であっても、ファンは球場へ足を運ぶことをやめず、少しずつでもたるにお金を投じ続けました。

結果、年末までに400万円(現在の価値で約1億6000万円)が集まり、球団解散の危機を乗り越えました。

球団存続の危機再び!平成のたる募金

私自身がクラウドファンディングに参画した(お金を払う)のもたる募金が初めてです。

時は2005年、大学生になったばかりの頃です。

前年に発生した球界再編問題(近鉄バッファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併)の際に、カープファンも球団存続の危機を覚えました。

「リーグ5位が定位置になって、優勝からもっとも遠ざかっている。弱いしお金もない、このままではカープがなくなってしまう!」

そこで球団復興の大型プロジェクトとして新球場建設が具体化。これに並行して平成のたる募金が市民運動として広がっていったのです。

結果、1年間で1億2000万円が集まり現在のマツダスタジアム建設へとつながったのでした。

マツダスタジアムの建設が、10年後のセ・リーグ3連覇へのはじめの布石であったことはプロ野球ファンの方であればご存知かと思います。

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マツダスタジアム建設には、官民の紆余曲折があった。その話はまた今度…


なぜ、カープのクラウドファンディングは成功したのか?

クラウドファンディングにも方式がいくつか種類があるので、一概に成功率を出すことは難しい・・・

のですが、

ひとつカープが行ったクラウドファンディング(通称たる募金)の興味深い点を明確にしておきましょう。

それは「金銭的な見返りがゼロ」であること。

比較として、READY FORで実施された鹿島アントラーズの寄付型クラウドファンディングを見てみましょう。

readyfor.jp

新型コロナウイルス感染症対策のために、入場料の減少が見込まれる。そこで実施されたクラウドファンディングは結果、1億3千万円を超す資金が集まりました。

このクラウドファンディングに参画した人には見返りが用意されており、

・ファンクラブ会報誌への名前掲載
・スタジアムへの名前掲載
・特別企画・セミナーへの参加

などが設定されています。今年はあらゆるスポーツチームが観客入場料の減少に苦しんでいるため、同様のクラウドファンディングが実施されていましたがおそらく鹿島アントラーズがもっとも多くの資金を集めたのではないでしょうか。

クラウドファンディングにおいて魅力的な見返りがあることは、調達額をワンランク伸ばすために必要な要素です。それは間違いありません。

一方、カープが実施したたる募金では上記のような特典は一切ありませんでした。

ということは、そもそもクラウドファンディングが成功・失敗の違いは、魅力的な見返りがあるかどうかではないということです。

それではクラウドファンディングを成功させる、特に寄付型の資金調達であっても大きなムーブメントを起こすには何が必要になるのでしょうか。

カープの球団運営から2つの条件を導き出しました。

1. 誰かの◯◯が消える危機感

ひとつめの条件は、危機感です。それも自分個人の範疇で起こる危機感ではなく、 自分が所属するコミュニティの共通話題や、家族・友人・恋人と同じ時間を共有した思い出が消え去るという危機感。

寄付型のクラウドファンディングにおいては、
「自分さえ我慢すれば大丈夫」
「自分だけ逃れる方法を見つければ良い」
という思いを抱かせてしまった時点で、参画者を集めることができなくなります。

なぜ大学生の私が、新球場に名前が掲載されるわけでもないのに3万円も寄付をしたのか。

なぜ小学生の野球少年が、中学校にあがったら新調するグローブの貯金をたる募金に投じたか。

なぜ普段はプロ野球を観戦しない主婦が、家族を代表して募金のために球場まで足を運んでいたのか 。

共通する理由は、
自分と同じ様に悲しむ人が身近にいるから、自分が動かないといけない

と思えたからなんですね。

自分さえ我慢すれば済むなら、人は行動を抑制するかもしれません。しかし自分の周りにいる誰かも、自分と同じ我慢や寂しさを強いられるならば積極的に行動する理由が生まれるのです。

寄付型クラウドファンディングの要はココです。

クラウドファンディングを呼びかける際には、ポジティブな見返りをアピールする前に、危機感を醸成すること。忘れないでください。

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球界再編問題。当時のバッファローズの選手は、ついに坂口1人になった。


2. 経営姿勢をファンが理解している

プロ野球ファン以外ではあまり知られていないが、カープは金がない貧乏球団と言われながらも初めてリーグ優勝した1975年以来、40年以上にわたって黒字経営を続けています。

この黒字経営は決してオーナーが私欲を肥やすための利益ではありません。

ファンの応援したい欲を叶えてくれるグッズ販売と、選手のプレーを精緻に計算した年俸の賜物です。

そしてこうした経営姿勢をファンが良く知っているからこそ、たる募金を実施した際にもファンが球団運営と同じ目線で寄付に参画したのです。

補足として球団運営の収支の状況を軽く解説しておきましょう。

まずプロ野球球団の収入源は主に4つ。

1.ホーム球場の入場料
2.グッズ売上
3.放映権料
4.スポンサー料

収入のうち40%を入場料が、30%をグッズ売上が占めています。放映権料は年々減少しており、テレビ全盛期と比べると約4分の1まで減少しています。

つぎに支出は4つ並べましょう。

1.選手の年俸
2.職員の給料
3.遠征費・キャンプ費
4.球場使用料

支出では、選手の年俸と球場使用料が球団によって大きく変動する項目です。

以上から、黒字経営を続けるにはどこが重要かが分かってきます。

まず収入を増やすために注目すべきは、入場料のアップ。なのですが実はこれハードルが高くなかなか実行できません。

現在、プロ野球12球団のホーム球場の集客率は軒並み80%超え。

テレビでは「野球離れ」が強く叫ばれているものの、球場への来場者は年々増えているのでよっぽどの不人気球団でもないかぎり、入場料のアップは難しいでしょう。

カープでは旧広島市民球場から、現マツダスタジアムに切り替わり定員が増えた(約1.5倍)ため入場料の底上げに成功しました。しかし、そう何度も実行できる施策ではありません。

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安部選手のサヨナラホームランTシャツは、販売受付開始1時間で3000枚が売り切れた。
ですので、黒字経営を続けるためのポイントは、グッズ売上を伸ばすことです。ここでカープ球団の商品企画部の強さが輝きます。

「カープのグッズはなぜ発売、即完売が連続するのか?」
マーケター視点で読み解き2つの要因をピックアップしましょう。

ひとつは、翌日商品化

たとえばある選手がプロ初のサヨナラヒットを打ったら、なんと翌日にはその場面をプリントしたTシャツを商品化し、販売開始するというスピード感です。

もうひとつは、大型倉庫の隣接

マーチャンダイジング戦略において、商品の売れ行きに応じていかに早く補充できるかは売上の機会損失を防ぐことにおいて最重要施策です。

カープは25年ぶりのリーグ優勝をきっかけにグッズ売上が急増したことをきっかけに、マツダスタジアムのすぐ近くにグッズ専用の大型倉庫を建設。球場での販売だけでなく、通販にも大量に迅速に対応できる体制をいち早く整えたのです。

このようなファンが欲しいものを欲しいときに手に入れられる商品企画・物流の体制づくりといった地道な事業経営が、ファンにもよく知られているからこそクラウドファンディングにおいて多くの参画者が現れているのです。

舞台裏を見せるビジネスが勝つ時代に

そろそろ総括をしましょう。

感染症の流行をきっかけに、様々な企業・団体がクラウドファンディングにチャレンジした2020年。同じようなプロジェクトであっても、予定以上の資金を集められるプロジェクトがある一方で、微々たる注目しか集まらないものもあります。

一体、何がクラウドファンディング、特に寄付型クラウドファンディングの成否を分けるのでしょうか?

プロ野球唯一の市民球団・カープでは、過去に2回のクラウドファンディング(たる募金)を実施し、見返りがない寄付であるにも関わらず2回とも1億円以上の資金を集めました。

なぜカープに寄付は集まるのか?具体的に2つの要因を実例に沿ってご紹介しました。

・誰かの◯◯が消える危機感
・経営姿勢をファンが理解している

通説では、クラウドファンディングの成功要因は共感だと言われています。

確かにそのとおり、カープには共感を生むストーリーが歴史にあります。その歴史は決してきれいな話ではありません。いや、どちらかと言えばあまり表には見せたくない面です。

しかし、そうした舞台裏を見せる球団だったからこそ、ファンから愛され、ファン自身が行動を起こすたる募金が成立したのでしょう。

プロ野球もビジネスです。

広島カープの伝統に学ぶクラウドファンディングの成功法は、
共感を生むために舞台裏を見せること。

ウソ、偽りなく、誠実に、一貫した経営を見せることで、ファンが生まれ、ファンがファンを呼ぶビジネスが勝つ時代になった。という学びを今月の日記の結びとします。

それではまた。


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